どんなことしているの?

 ここ2〜3年の間、少し状況が深刻になってきています。滞在者は常時6〜7名が続きました。また滞在期間の長期化も起こっています。現在最長記録を更新中で、6年以上になる人がいます。

 しかし、始めた頃からの基本方針は何も変わっていません。

 以前、講演会をした講演内容から電話から始まる私たちの活動をご紹介したいと思います。

 私たちの働きに欠かせないのは電話です。ほとんどの関わりが電話から始まります。私たとの中では、電話から始まる私たちの関わりに、いくつかの段階を設けています。

 まずは第一段階として、電話での相談で相手が納得できるケースがありますが、この場合、私は電話の相手と会うことはありません。しかし、余程の確信がないと電話だけという形では終わりません。

 そこで、第二段階です。電話をかけてきている場所を聞き出し会いに行きます。この時、時間が勝負です。それは、相手の気持ちが変わらないうちに、現場に行かなくてはならないからです。相手は、電話をかけてくることだけでも、相当の覚悟と勇気を振り絞ってしているのです。電話をかけた後も、その決心は相当揺れ動いているようです。私はいつも電話をくれた電話ボックスで待ち合わせますが、ほとんどの場合、その約束の場所で待っている人はいません。崖の方に歩いていたり、ちょっと離れた所からこっちを伺っていたり、いなくなっていたりします。無事に会えたら、そこで、崖のそばからは離れたところを選んで話を聞きます。相手の顔を見て、様子を診て話ができますので、相手の状態を把握しやすく、大丈夫だと判断できれば、ここで別れる場合もあります。他府県など遠方から来ている方々のためには、帰る場所があるというのが大前提ですが、白浜駅から電車に乗せることもあります。

 しかし、ここで、まだまだ心配が残る場合、次の第三段階があります。この場合、教会で一泊か二泊かしてもらって、落ち着くのを待ってから家へと送り出します。誰でも自殺を考えているときは、一種の興奮状態なのです。この興奮が冷めるまでは安心できません。教会で泊まっている時は、私の家族と一緒に食事をします。4歳の息子と18ヶ月の娘といますが、その騒がしい食卓で、一緒に食事をしてもらいます。しかし、意外とそこで気持ちがほぐれてくるのです。子どもたちに笑顔を向け始めたら、気持ちがほぐれてきた証拠です。その人に受け入れ先があって帰る場所が確認できたら、受け入れ先と連絡を取って送り出すか、迎えに来ていただきます。

 そして帰る場所がない場合、第四段階です。長期滞在を覚悟して白浜で自立を目指します。まずは、だいたい1週間は見込んでいるのですが、心身ともに回復していく必要があります。第四段階に残る人は、ほとんどの人が何日も食べていなかったり、働く意欲を失っています。初めは食べて寝るだけの毎日を送るのです。私も彼らに「働け」とは言いません。むしろ「こんな機会は滅多にないからゆっくり腰を落ち着けて今後のことを考えていく時間を持とう」と励ましていきます。そんな生活の中で、彼らは次第に散歩に出たり、本を読んだりするようになり、掃除を始めたりするようになります。そうなれば、教会の掃除などをお願いして働く場を与えていくようにします。そして昼食と夕食の時に、少しずつ今後のことについて話をしていきます。そして、自立するための就職活動や、借金があるならその返済や自己破産などの法的な手続きを始めていきます。私は、彼らがしっかり自立できるまではずっと家にいて良いことを何度も言葉と態度に表しながら、一緒に自立へ向けた努力をしていきます。今まで10ヶ月間という人が二人いましたが、これが一番長い滞在です。その二人の方々がいた期間内にも他の方が来ていますから、うちに4人が下宿していた時期もありましたが、たいてい24ヶ月で自立していきます。